恋はシフトキーではない

市田さんの作品に確か「恋はシフトキー」というタイトルのものがあって(今サイトを見に行ったけど見つけられなかった)、作品それ自体もだけどシフトキーという比喩が言い得て妙と思いずっと印象に残っていた。恋をすると世界が輝いて見えるみたいなことをすべてのアルファベットが大文字になると表現しているわけですね。

 

特定の人間と交際すると何かが分かるようになるのではないか、特に映画なり小説なり音楽なりによって描かれている内容に実感を伴った共感ができるようになるかと思ったら別にそんなことはなかった。強いて言えば吉澤佳代子「ケケケ」を聴いた時の「毛、まじでいらねー」度が上がったくらいです。

 

「いつか別れたとしても、自分と一緒でなくてもいいから楽しく生きてほしい」みたいなこと言われて、普段ふざけたことしか言われないのでかなり面食らってしまい、あと私は別れた後のことを祈ってくれることを物凄い愛情だと思っているので二、三日ずっと咀嚼してて結構ボーッとしてしまったけど三日後に会ったら全然通常運転だった。

I won't change it, what's the hell?

まだ終わらない悪夢をみてんだよ - もののはずみ

このあと輪を掛けて最悪の悪夢を見たりしていたけどとうとう5km前から見えていた地雷を全速力で助走つけて踏む羽目になった。

 

という文章を1ヶ月以上前から下書きに残していてそのあと色々こねくり回したけど全然進まなかったのでもう諦めて残りの文章を消した。そして今思うと「助走つけて踏む」どころか頭から突っ込んでいる。

なんか今この人と付き合っており(「付き合う」って何?)、出会って早々に「あ、こいつやばいな、深入りしないようにしよう」と思ったはずの人間に結局めちゃくちゃ深入りすることになってるの愚かの極みという感じがする。最初から悪い予想がすごく緻密にできあがっていたんだからいくらでも避けようがあったのに、薄々わかっていながら自分の予想を丁寧に再現しているので本当に馬鹿だと思う。

何度考えても仕事をものすごく真っ当にやっているところの他はこの人には交際相手としてのいいところがほとんどないような気がする、よく一緒に飲む同期としての長所の9割は交際相手としては救いようのない短所だし、分かり合えることもほとんどない。でも仕事をものすごく真っ当にやっていることだけは本当に信じているし掛け値なしに尊敬に値すると思う。これは贔屓目で言っているのではない。あと、分かり合えることはほとんどないし、この人は私のことを全然理解はしていないと思うけど、私のことをかなり知っているとは思う。深入りしない方がいいと思って、だから深入りするつもりが全くなかったから却って気安かったのかもしれないけど、知り合った当初から普通は他人には言わない方がいいようなことでも別に知られてもかまわない気がしてべらべら喋ってたし。

こんなふうに思っているわりになぜ「付き合う」に合意したのか、その時点では完全に混乱していたのでその理由が自分でもいまいちわからなかったけど、あとから考えると「これを断ったらこの人とはもう二度と飲めなくなるだろうな」と思ったからのように思う。それはつまらなかったから。

でも改めてよく考えると、それより一回付き合って別れた後の方が決定的に断絶する恐れが高い気がするので「この人と二度と飲めないのはつまらないから」が理由なら選択肢を間違えたのかもしれない。まだ断絶していないので答え合わせはできていない。

まだ終わらない悪夢をみてんだよ

初夢はまあいいとして元旦に昼寝したときに見た夢が本当に最悪で、ハグして、と言われたのでまあいいかと思って(いまにして思えば「それ私がいいですよって言ったらどうするんですか?」は「いいですよ」と言っているも同然、)いいですよと言った後に激しい動悸がおさまらなくなり、うわーこればれるの恥ずかしいな、やっぱり断ればよかった、と思う夢だった。

バリバリ性欲の発露という感じでかなり最悪。

今のところこれは性欲あるいは性欲に限りなく近い類の欲求として自分では整理しており、この時点でまあまあ最悪なんだけどこれが恋愛感情ということになるといよいよ救い難いことになるので、そして「これは恋愛感情なんじゃないか?」と思っている時点でそれはほぼ間違いなく恋愛感情なので、「性欲…………」と思うことでそれ以上自分に都合の悪いことを考えないようにしています。

 

馬鹿につける薬を捌くきみ

あまりに恥ずかしくて前回の日記に書けなかったんですが、前に「この人のこと好きなのかな??」と思って二ヶ月ほどして突然何も思わなくなったことがあって、それは(その人とは全く関係なく)飲み会に行って程々に飲んで帰ってふと早朝に目が覚めたらそういう感情が完全になくなっていた、という経緯で、その時は「外れていた頭のねじがアルコールで治った」もしくは反対に「アルコールで頭のねじが外れた」のどちらかか、もしくは私に彼氏がいないことなんてとっくの昔に知っているはずの同期がその席であまりに何回も「彼氏いるの?」「彼女は?」と聞いてくるのでいないって前から言ってるし特に欲しいとも思ってないっていうのも前から言ってるでしょうと懇々と説明する羽目になったから脳が(そうか、彼氏いらないんだった)と思い出したのかなと思ってたんだけど、多分この同期が異常な距離感でめちゃくちゃ耳打ちしたりしてくるせいだったんだ、というかなり最悪な事実に四ヶ月経ってから気が付いた。というか確信を得た。これまで見えない振りしてきたんだから今更気付くなよと思う。

一年前から「(一緒に仕事したり飲んだりする分にはすごく楽しいし面白いけど)こいつ、恋愛感情もしくは性欲の対象として入れ込んだら絶対にこっちの人生が破滅するからあまり不用意に近づかないでおこう」って思ってたのになんで見えてる地雷に片足かけてるのか、あまつさえそっちの足に体重かけつつあるのか、あまりにも馬鹿すぎる(答え:一緒に仕事したり飲んだりする分にはすごく楽しくて面白いので交流を断てないから) 

the only roads are cul-de-sacs

去年まで同じ部(と言っても業務上の関わりはほとんどなかった)で、一時期同じタスクフォース的なところで働いていた同期とその後輩(現在進行形で私とかなり業務上の関わりがある)と飲んだ。

(後輩)さんたちと飲もうと思ってるんだけどどうですか、という連絡が同期から来て、「たち」って他は誰だよと思ったけど私の中で「面子を確認してから参加するかどうか答える」は万死に値するほどダサい行為なので何も聞かなかった。ら、他にはいなかった。「たち」って何だったんだよ。

同期はもともと他人をいじりまくる人なのに加えて私は同期だから輪をかけて何を言ってもいいと思っている節があり、相手が圧倒的に弁が立つためどんなに正論でも言い負かせないことはよくわかっているので私はあまり逆らわないんだけど、同期が席を外している間に後輩が「(同期)さんって(私)さんにいつもあんな感じなんですか?大丈夫ですか?」と結構本気で聞いてきたのでちょっと面白かったです。私自身の心情としては平気だけど世間的には大丈夫じゃないと思う。ただ後輩も後輩で彼女にコスプレをさせたいけどしてくれない話などを私にして平気そうにしていたのでそんなに真っ当な感覚があるわけでもなさそうでかなり良かった。私自身は言わずもがなですが。

お店の人に「大学生?」と聞かれて大学生に見えるのかと同期はちょっと喜んでいたけど真っ当な大人だったらしないような飲み方と話題選びをしていたからに違いないので私は恥ずかしかった。

断るほど不快でもないので黙ってやらせていたら同期が何回も私のほっぺたを揉んでくる上に後輩も自分もやっていいか聞いてくるので(いいですよと言ったが結局やらなかった、それが普通の感覚だと思う)一体何をやっているんだろうと思った。同期がくっついてきて剥がせず、そこで本当に困って後輩に「助けて……」と言ったが特に助けてくれなかった。

3軒目で後輩が途中で帰って、4時に店が閉まるので出て、なぜか歩いて帰ると同期が言い出し、まあ歩いて帰れない距離ではないし私は長距離歩くの平気だしそうすることにしたんだけど勘で歩く上に私が携帯で地図を見ようとすると怒るので完全に明後日の方向に行っていた。おんぶしてと言うのでやってみたが(できるような気がした)無理で、交代したけどできなかった。おんぶされようとしているところにちょうど飲み会帰りらしき集団が通りがかり、傍から見たら泥酔したバカップル以外の何物にも見えないだろうから嫌だなあと思った。歩きながらめちゃくちゃくっついてくるけど人目もないしもういいやと思ってそのままにしていた。途中コンビニでお茶を買ってもらった。録音してしかるべき部署に持って行ったら即処分が下るであろう冗談を色々言われたが割愛。

完全に道を間違えていることが明白になったあたりで温泉施設があったので行くことになった。このシチュエーションはおかしいよなと思ったけど別に同じ浴室に入るわけじゃなしと思って何も言わなかった。湯船に浸かっていると、温泉に入ってうれしい:一体何をやってるんだ?=1:5くらいの感情になった。落ち合うことにしていた休憩室に行くと簡易ベッドみたいなのがたくさんあって、同期の方が先に出ているかもしれなかったから歩き回って探したけど見当たらず、なんでこんな沢山の眠り姫の中からたった一人を探すみたいな真似しないといけないんだよと思って諦めた。同期の方が後から出てきたので大丈夫だった。一緒に寝ようとするとか同期と反対側向こうとするとどうしてそっち向くんだと文句言ってくるとかの予想通りの応酬をやってちょっと寝た後に目が覚めたので目を開けてじっとしてたらすぐ横にいたのでかなりびっくりした。

建物を出て駐車場を歩いているときにまためちゃくちゃくっついて歩いてきて「嫌そうだね」と言うので「嫌そうですよ……」と言ったら怒られた。9時になっていたから当たり前なんだけど日差しがもう完全に朝だった。さっきお風呂入ってる時思ったんだけど同期で一番仲いいの(私)さんな気がする、と言うのでそんなわけないでしょうと言ったけど後から考えたら同期が本当にそうなのかは知らないけど私が業務時間外に一番よく会ってるのはこの同期だというかなり恐ろしい事実に気が付いてしまった。

後日何度か職場で会った時は妙に大人しくしていたのでまさかとは思うけど懲りたのか?と思ったけど翌週に飲み会で一緒になった後でちょっと喋ってる時にハグしてとかまた言ってくるので(こわ……)と思って「私がいいですよって言ったらどうするつもりなんですか?」と聞いたら「やったーっつってしてもらう」と答えるので(こわ……)と思った。この(こわ……)は乱暴されそうで怖いという意味ではないです。

という恐怖体験はあったものの久々にいっぱい飲んで下品な話がいっぱいできたので楽しかったです。

 

消えたくなるならあやまれ

一年以上前に一ヶ月弱一緒に働いて、その後は社内ですれ違ってたまに雑談する程度の交流しかなく、今年度になって私のよく行く支社に異動したことをたまたま知ったので昨年度はお世話になりました脱出できてよかったですね私時々そちらに行くので会うことがあったらよろしくとメールしたけどまあ実際もう会うことないだろうなあ〜と思ってたのに流れでなんとなく行く度に会ってメールもだらだら続いていてでも何の自己開示をするわけでもない

という状態で、好きなのか……?と突然思うようになって二ヶ月くらい経ったらまたある日突然何も思わなくなってラッキ〜よかったよかった困ってたよ〜やっぱり気のせいだった〜よかった〜安心した〜と思ったのにそれから二週間くらいしたらまたやっぱり好きなのか……?状態が始まって今度こそ本当に困っている。

 

何が困ったって好きなのかどうか分からないとか好きだとして何らかの可能性があるか分からないとか以前に自分がどうしたいのかが分からないことで、前に他人に付き合いませんか?って聞かれた時に(付き合うってあなたは具体的に何を私に求めてんの?)って思ったんだけどこんなに速攻でブーメラン返ってくるとは思わなかったので笑えますね〜

理由なく会えるようになりたいのか?出かけたり遊んだりしたいのか?寝たいのか?一緒に暮らしたいのか?結婚したいのか?分かりたいのか?分かられたいのか?占有したいのか?占有されたいもしくは占有したいと思われたいのか?ただ好かれたいのか?なんかどれも私の感情としては可能な気がするんだけど、じゃあ積極的にそうしたいのか?となるといまいちしっくり来ない気がする。

でも今までの人生で進路とかを考える時に「細かい理屈は説明できないしする必要も感じていないがとにかくこれが正解であることだけは確信している」という状況が何度かあり、この人のことも「(そもそも誰かを選択する必要があるとは思ってないけど、誰か一人選択するとすれば)正解はこの人だ」とは思う。(言い換えれば村上春樹が言う「100パーセントの女の子」、と書こうとして違うなと思った。正解とは100パーセントのことではないようだ。)しかしそれは私にとって相手が正解というだけで相手にとって私は別に正解でもなんでもないんだよね〜

 

困りましたね〜〜

 

 

僕が嫌いな心が

 

このツイートを読んだので、挙げられた本を全部買って読んでいた。全部面白かったんだけどギリシャ語の時間以外は「恋に落ちて、気持ちが不安な」人に勧めるにはあまり優しいラインナップではないような気がする。

 

私はこの人に恋愛感情を持っているっぽいなということに5月下旬くらいに突然気が付き、2ヶ月ほどただ困ったなー困ったなーと毎日思っていて、困ったなーと思いながら時々会ってなぜかコーヒーを奢ってもらったり他人に貰ったお菓子を横流ししたりしていたんですが、ある日突如恋愛感情(らしきもの)がなくなった。

それがなくなる前日に同じ部とかの同世代の人たちと飲み会に行って、好きな人がいるみたいな話は無論一切せず、むしろ彼氏も彼女もいないしいらないしそのような話は何光年も離れた遠い星の話ぐらい私には自分と関係のない話に思えるという私が高校生くらいの頃から何年も繰り返した主張をしてやっぱりあんまり理解されなくて帰ってきて次の早朝に目を覚ますと「困ったなー」がなくなっていた。

信じられなかったけど何をどう考えてもなくなっていて、あんなに毎日(困ったなー今日もまだ好きみたいだなー早く終わりにしたいなー)と思っていたのにいざ終わってみると若干寂寥感すら感じるのであった。

私は上記の3冊を「ギリシャ語の時間」、「アンダー、サンダー、テンダー」、「あまりにも真昼の恋愛」の順で読んでいて、飲み会の頃は「あまりにも真昼の恋愛」を読んでいる途中だった。

「あまりにも真昼の恋愛」は短篇集なんですが、表題作には主人公のことが好きと唐突に言い出したけど「いまは好きな気がするからそう言っただけ。明日はどうなるか分かりません」と言う女性が出てくる。で、実際、「そうだ、もう好きじゃないんです、先輩のこと」と言う。恋愛感情(らしきもの)がなくなった後にもう一回読んでなるほどと思って、というか、小説に自分の状況を仮託して読み返すという行為を自分がやっていることが自分に酔いすぎてて気持ち悪くてウケた。大体他人を好きになった気がするけどどうしたらいいか分からないので「恋に落ちて、気持ちが不安なとき」に、とおすすめされている本を読むという時点で相当気持ち悪い。

どうせもうMAX気持ち悪いのでついでにもう一つ気持ち悪いエピソードを書くと、支社に行った時にたまたま同じ部屋にその人が入ってきて、その人かと思ったけど眩しくて顔がよく見えず確信が持てなかったということがあり、好きな人を見ると瞳孔が開くってマジなんだなーと思いました 以上