アルコールのメシア

春の宵 (韓国女性文学シリーズ4) | クォン・ヨソン, 橋本 智保 |本 | 通販 | Amazon

ここ一年くらい割と韓国文学(特に女性作家の作品)を読んでいるのでその流れで読んだ。悲しくて寂しい話が読みたい気分だったのでそうそうこれだよと思いました。私は結構な酒飲みなので作者あとがきを読んでそこに書かれたエピソードに身に覚えがあってどきっとした。

 

昨年度二度ほど一時的に他部署?プロジェクトチーム?タスクフォース?に行っていた時にとてもお世話になった同期が今年度異動になり、私が業務でよく行く支社に配属されていた。そちらにはよく行くのでもし会ったらよろしく、と言いながら、とは言っても彼の部署は私がよく行く部署とは別棟だから実際会うことはもうないだろうなと思った。

しかし、こちらに来る時は教えてくださいと言われたので、どの程度の社交辞令なんだろうと思いつつそう言われたからには一応連絡した。何月何日出張でそちらに行くので何時くらいに行ってみます、どうせまた近いうちに行くしわざわざ在席とかはしなくていいです。そう書いたメールへの返事が来なかったのでああ間違えたなと思った。私はコミュニケーション能力に著しく難があるためこういう社交辞令をかなり真に受ける。でもそれだったら「もし会ったらよろしく」に対してわざわざ「来る時は教えてください」なんて社交辞令言うなよなー、とほぼ八つ当たりのようなことを考えた。

当日どうしようか迷ったが予告しておいて現れない薄情な奴と思われるのもいやだったし、まあいい人なので歓迎していなくても多少は相手してくれるだろうという甘い考えもあり行ってみた。そもそも今日社内にいるかどうかわかんないんだよな、と思いつつ目的の部署に行ったら果たしてちゃんといた。のだが、電話中(しかも見るからに長くかかりそうだった)ので帰るかどうか迷ったがしばらく様子を見ることにして部屋の端で立って待っていて、二人くらいに「あっ違うんですAさんに用があって、でも別に約束してるわけじゃないんで大丈夫です」とか言っているうちに本人が気が付いて電話しながら私に向かって手を振った。私を忘れていなかったらしいことに安堵したがよく考えたら年度末だって何度か会っていたんだから流石に忘れないだろう。本人含め何人かに椅子を勧められたのを断って所在なく爪とか携帯とかを見ながら立っているうちにこれだけ長引くならやっぱり帰ればよかった気がしてきた。約束しているわけでもないのだし。

長い電話を横で聞いていると、ああそうだったこういう過剰なまでの親切さと丁寧さで喋る人だった、それでいて電話切った瞬間に悪態ついたりするんだよな、と思って、知り合った時期にそう思ったのと同じようによく似た属性の先輩(その人は私が一番最初にいた部署にいた人で、ものすごく仕事ができたけど上司でも客でも本当に誰にでもタメ口をきき、しかしお客には本当にとても好かれていてバレンタインにお客さんの女性から義理チョコが送られてきたことがある)のことを思い出した。余計なことを考えているうちに電話が終わったんだけど「相変わらず前と同じような仕事してるじゃないですか」みたいなことを言って一言二言しゃべっているうちにまた来客があったので帰ろうとしていると「今度来る時連絡してください」と客の頭越しに言ってくるのでまた来てもいいんだ、と思って嬉しかった。そして最初に戻って「社交辞令だろうけどそう言われたからには一応連絡してなくては……」を始点とした無限ループが始まるのであった。

私は老若男女問わず気に入った人間に対しての執着がかなり異常で、そしてこの日会ったことで(いや、多分「もし会ったらよろしく」に対して「来る時は教えてください」と言われた時に)どうもこの人がその執着の対象に入ることが確定してしまったらしくて、たとえ何か迷惑をかけることがないとしてもこれ以上会いに行くのは不健康な気がするんだけど、しかし往生際が悪いのでこの無限ループを自分から止めるつもりがないことが自分でわかっているのでどうしようかなあという感じです。

 

 

追記(2021.6.1)

私は老若男女問わず他人に異常執着を見せることがままあり、これまでの対象は多い順に独身女性>既婚男性>既婚女性で独身男性はいなかったので「恋愛感情に分類し得る気もするがそう分類しても誰も得しないからそうじゃないことにしておこう、独身男性だったら「恋愛感情じゃないか?」って悩んだだろうからそうじゃなくてよかったな」って毎度毎度やってきたんですがそれで誤魔化し続けてきた分の取り立てが今来ていますね