お試し期間は終わってしまったよ

 どういうわけか最近よくどこに戻りたいのか考える。

 戻るというのは、今私はほとんど出向みたいな状態で仕事をしているので、その定められた期間が終わった後に、元々の職場のどの部署に行きたいかという話だ。

 私はそもそも仕事にお金を稼ぐ以上の意味を一切求めていない。今の職場は第一志望ではないし、それ以前に大学を受ける時に「大学では好きな勉強をしよう、全然就活には役に立たないだろうけど、大学を出たらあとは余生」と決めていた。 

 だから本当はどこに行こうがいいはずなんだけど、そしてそれなら少しでも楽な部署に行こうと考えるのが普通だろうけど、最近なんとなくそれ以外のことを考える。

 多分出向してみたら、あんなにみんなが出たがっていてそれに流されて私も早く出たいと言っていた(でも本当はそうでもないことは自分で分かっていた)前の部署が妙に懐かしく思えるからだと思う。その理由のほとんどは今の業務にも環境にもまだ慣れなくて勝手知ったる業務と同僚に対してホームシックみたいな気持ちを感じているだけだとは分かっている。

 でも少しだけ、もっと泥臭い仕事がしたい、と、ただあそこに帰りたいだけからだけではない理由でそう思っているのも多分本当だった。今の職場はずっと早く帰れるし、私の業務そのものには誰かの生活や安全や人としての尊厳がかかっていることもないから気は楽だし(前の部署より偉い人が出てくる確率はずっと高いのでそれは嫌だけど)、変な電話はあるけど返事をしなくていいから天国みたいだ。でもこういうんじゃない気がする。あの日何の気なしに開いた書類にあった文言を直視して追及する選択をしたときに決定的になったように思う。言わないほうがいいことくらい誰に言われなくても分かっていながら「分からなかったり困ったことがあったらまたいつでも私に連絡してくれ」と言ってしまった時にも。