私のために祈るな

いかなる権利があって、君は私のために祈ろうなどという了簡を起したのだ?私は仲立ちなど望んではいない。ひとりでなんとか急場を切り抜けるつもりだ。窮境に落ちた人間の助力なら受けもしよう。だが、それ以外のどんな連中のもまっぴら御免だ。たとえ聖者からのものだろうとも。私の救済に他人が嘴を入れるのは我慢がならぬ。もし私が自分の救済を怖れ、避けようとしているのだったらどうする。君の祈りなんて不謹慎のきわみじゃないか! どうか、ほかでやってくれたまえ。いずれにせよ、君と私とは同じ神々に仕えてはいない。たとえ私の神々が無能な連中だとしても、君のが負けず劣らず無能無力だということは、大いに信ずべき節がある。君の神々が、君の考えているとおりの存在だと仮定したところで、なお彼らには、記憶を絶して古いある戦慄的な恐怖から、私を癒してくれる力などあるはずもないのだ。(シオラン「生誕の災厄」)

久々にシオラン「生誕の災厄」を読みたくなったので書い直した。電子書籍が欲しかったけど、ないんですね。

 

この時と同じメンバーでまた仕事をさぼって遊びに行った。温泉入ってアイス食べて車の中で酒を飲んで解散した。

この中で唯一所帯を持たない人間であるところの私はその前の週に以前の部署(つまり、彼らが今いる部署)の同僚の人に突然(私が異動してから2年以上会っていなかったし、それ以前にも2人で会ったことはなかった)誘われて飲みに行って、その後にもまた2人で出かけることになっており、私は律儀に全てを予め報告していたためその話になった。

私は自分はいかなる男とも女とも恋愛をしないであろうということがもう自分で分かっていて、それは一般的な感覚からすれば世間の人々の考える幸福(恋愛、結婚、出産、エトセトラ)を頭から諦めているように映るので、だいたいのパターンにおいてこの3人とも「まあまあそういうこと言わずに試してみれば?無理にとは言わないけど……」というようなことを心からの善意で言うのが常だった。でも今回は先に「この人の、自分より能力が劣る人間に対する想像力のなさが苦手だったな、ということを久しぶりに会って改めて思ったからたとえ先方がそのつもりだったとしても無理です」と言っておいたところ私の言い分について全員心当たりがあったためかなりトーンダウンしていておもしろかった。

それ以外のところは、多分、嫌な言い方だけどスペック的な意味ではほとんど問題はないのだ。でも、おそらくこの一点が本当に許せないがためだろうと思うんだけど、普通に喋れるし一緒にいてつまらないわけでもないのに不思議なくらいこの人につゆほどの関心も持てないなあということが実際に会ってよく分かった。

女性の先輩は更に「もっとずっと以前、5年くらい前から彼は(私)さんに気があった」説を提唱していて、その真偽どうこうより当時まだ同じ係じゃなくてあまり親交もなく「〜係の(私)さん」というその他大勢に過ぎなかった私に対する先輩の認識を想像したらなんか変な気分になった。

大人になっても、大人になってから知り合った人たちとこうやって一日かけて遊んで、しかも異性関係にいらん世話をやかれるなんてかなり青春っぽいことできるんだなと思った。めちゃくちゃ楽しくて、口に出したら余計つらいのが分かっているのに「明日仕事行きたくない」って10回くらい言ってしまった。

 

で、当該男性については2回目に会った時に「よかったら付き合いませんか」と言われて、よくなかったので断った。理由を聞いてもいいかと言われたので、本当は「私は他人と付き合ったり結婚する気が(少なくとも今の所は全くないし、今後億が一気が変わることがあったとしてもそれは絶対にお前では)ないから」だったんだけどノーという答え自体に変わりないのに敢えて括弧の中を言う意味がないので括弧内は省いて言った。こういうことを言うと全員「過去に何かあったのか」という意味のことを聞いてくるけど、無いんだよ何も。悪いけど。「納得させられるような材料がなくて申し訳ないんですけど」って言った自分にも後から腹が立ってきた。納得させてあげる義務なんてなかったから。大体、何かあったとしてそれを教えてあげるほどの関係性ではないだろ。もう一つ頻出回答の「もったいない」が出てきたけど、フォローというか社交辞令のつもりで言ってるんだろうから本気にして怒る方がおかしいのは分かってるけど、私の人生なんだからほっとけよ。

そのつもりがないならノコノコ来て会ってんじゃねえよと思っただろうなと思って、その点については私にも言い分があったけどわざわざ言い訳するのも潔くない気がして何も言わなかった。私は「言わなくてもわかるでしょ」を汲んであげるほどはその人に対して優しい気持ちを全然持ってなくて、でもそのおそれがあるからって警戒して先回りして断るのも失礼だろうと思ったし、私は男の人のことを人間だと思っていて、これが普通の友達の誘いだったらきっと断らないからです。でもこれは世間一般からすると全く意味の分からない主張だろう。

帰った後なぜかちょっと落ち込んで、なんで私が落ち込まないといけないんだと思って、基本的に家でお酒飲まないのにお酒を買って、Amazonプライムナイチンゲールを観た。ナイチンゲールは良かったです。