ついでに片目もちょっとちょうだい

 職場に忘れ物をしたので取りに行ってきた。

 深い理由はないけどいつもJRで行っているのを私鉄で行くか、と思ったらちょうどよく定期券を忘れました。まあいい。お給金を貰えるようになったのだから往復500円以内の交通費くらい大したことはない。と言い聞かせる。

 職場の最寄の私鉄の駅は大学の最寄駅とよく似ていて、郷愁のようなものを覚えかけたけどそれでもあの駅とは確かに違うのでつらかったのであった。同じ会社なんだから当たり前なんだろうが改札や階段の感じがよく似ている、壁の感じが似ている、入っているコンビニも同じ、でも位置関係が違う。

 私鉄を下りてぼおっとしながら(もともとぼおっとした人間だが最近とみにぼおっとしている、危ない)職場へ向かい正面玄関から入ろうとして気付いた。今日はお休みだから夜間・休日用の通用口からじゃないと入れないし、そこに行くにはここからかなり大回りして行かなくちゃいけない。いつも通りのJRの出口からならすぐ傍だったんだけどなあまあ別に急ぐわけじゃなし、と再び言い聞かせる。生きているのか疑わしいくらい微動だにしない猫を二匹くらい見た。

 大回りして職場に入ると、ひとりくらい仕事をしているんじゃないかと予想していたけど誰もいなかった。ほお、と思ってうろうろしていたら別の課で誰か仕事をしている様子だった。せっかく来たのだし、誰もいないからゆっくりできるしちょっとばかり仕事をして帰るべきなのではないかと思ったけどやる気が出ないので帰る。こういうところがだめなんだと思う。

 帰りは帰りで間違えて信号無視しかけるわ乗り継ぎに失敗して恐ろしく時間を無駄にするわだったので私は本当におんもの世界に向いていないことだなあとがっかりしながら帰った。

 

 いつも出勤時は帰りたい帰りたい行きたくないもう無理と思いながら歩いているし退勤時はやった帰れる〜〜早く家に着きたいと思いながら歩いているので、こうゆっくり職場の周りを眺めながら歩ける機会もなかろうとうろうろしたりしました。近くの公園に名前の分からない綺麗な花がひと株だけあったりとか、こんなところにこんなお店あったのねとかいった発見があったけどこれ特に有効活用されないんだろうな。

 あと私は世界が滅びればいいとはよく思うけどみんな死ねとは思ったことないな、どんなに嫌いな人でも苦しんで死ぬのを想像すると嫌な気がするし私の視界から消えてくれれば十分だしそこまで憎んでいる人はいないんだろうか、ということを信号待ちで考えたりした。信号無視しそうになったのはそのせいです。