提灯鮟鱇

 尊敬する人の言葉を聞きながら、「でもこれは才能ある人の弁だよな」と思ってしまう辺り我ながら性格が悪いと思う。それは「やはり私はどうも人前に出たりするのが苦手で、今のひとり地道にやる仕事が性に合っているのだ」という話で、私だってできることならそういう道に進みたかったが才能が無いことに今更気付いてしまったのだ、と責められてもいないのに言い訳をした。脳内で。

  昨日は相変わらず、才能ある友人が褒められているのを聞きながらどういう顔をすればいいのか分からなかった。とりあえず「でしょう?私は随分前から知ってましたよ」という顔をしてみた。その場にいた中では私が最も付き合いが長く、そして皆それを分かっているので最近初めて知ったみたいに褒めるのはおかしいのである、多分。これも随分前から知っていたが、進路設定の流れが彼女と私でめちゃくちゃ被っていたので笑える。自分を勘違いした人間も自分を的確に(あるいは控えめに)把握している人間も同じような道を辿っているのでちゃんちゃらおかしい。

 私はいろんなことを無駄に恥ずかしがる人間なので、「こういうことを突っ込まれるのは恥ずかしいんじゃないかなあ」と思うと質問攻め(という程でもないかも知れないが)にされている彼女がちょっと気の毒だった。才能の代償だと思って諦めるがいいさ、と突き放せない程度に親愛の情は持ち合わせているので、私が思う程の恥ずかしさを感じていなければいいがと思う。まあ彼女が幸せなら何だっていいよ。